葬儀で喪主を務めることになった場合、困りがちなのが喪主としての挨拶です。普段から用意しているものではないため、突然かしこまった挨拶を考えるのは簡単ではありません。
特に、初めて喪主を務める場合は「挨拶したくない」や「どのような挨拶がいいのかわからない」と考えるものです。なんとなく挨拶文を考えると、使ってはいけない言葉を使う恐れもあります。
そこで本記事では、下記についてまとめました。
- 家族葬のタイミング別で使用できる喪主挨拶の例文
- 喪主の挨拶で使ってはいけない言葉
- 上手な挨拶をする際のポイント
この記事を読むとすぐに使える挨拶の例文が分かるため、初めて喪主を務める方におすすめです。
家族葬で喪主の挨拶が必要な理由
葬儀における喪主の役割は、故人の冥福を祈り、参列者へ感謝の気持ちを示すことです。そのため、家族葬においても基本的に喪主の挨拶が必要です。
ただし、家族葬の参列者は親しい方々ばかりのため、一般葬と比べて多少くだけた挨拶でも良いと考えられています。家族のみで行う場合は、省略するケースもゼロではありません。
このように、挨拶の内容や必要性は明確な答えがないものです。遺族で話し合ったり葬儀社に相談したりして、挨拶の方向性を決めましょう。
家族葬で喪主挨拶のタイミングと例文
家族葬で喪主が挨拶をすべきタイミングは、下記のように複数あります。
- お通夜
- 通夜振る舞い
- 告別式
- 精進おとし
- 火葬後
- 僧侶に対して
挨拶をすべきタイミングは多いため、それぞれを最初から考えると時間がかかり大変です。そのため、ここではすぐに使える例文を紹介します。順番に見ていきましょう。
なお、お通夜を省略する一日葬でも、告別式以降のタイミングは基本的に同じです。
お通夜
お通夜では、開式の挨拶は省略される場合が多く、閉式の挨拶を述べることが一般的です。閉式の挨拶では、参列者に対する感謝を述べましょう。また、お通夜のあとに通夜振る舞いが行われる場合はその案内と、翌日行われる告別式の案内も同時に述べます。
なお、挨拶をするタイミングは、僧侶の読経と参列者の焼香が終わって僧侶が退場したあとです。
喪主の○○でございます。本日はご多用のところ、ご参列いただき誠にありがとうございます。故人に代わりましてお礼を申し上げます。誠にありがとうございました。去る○月○日、〇〇は息を引き取りました。享年○○歳でした。生前はひとかたならぬご厚誼を賜り、深く感謝しております。 残された家族にも、故人の生前同様変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。なお、明日の葬儀は○○斎場で○時より行う予定です。何卒よろしくお願いいたします。 ▼通夜振る舞いがある場合 この後、別室にてささやかな食事の席を設けております。お時間の許す方はぜひご参加いただきますようお願い申し上げます。また、明日の葬儀・告別式は、本会場にて△△時より行います。本日は誠にありがとうございました ▼通夜振る舞いがない場合 本来ならここでお食事を用意し、故人を偲ぶひと時をすごしていただくところですが、都合によりご用意ができておりません。何卒ご了承ください。あらためまして、本日は誠にありがとうございました。どうぞ、お気をつけてお帰りください。 |
通夜振る舞い
通夜振る舞いは、お通夜のあとに行われる会食のことです。通夜振る舞いにおける挨拶は、おもに会食の前後に行われますが、立食の場合は省略される場合も珍しくありません。挨拶をする場合は、いずれの挨拶も簡潔にすることが多く見られます。
また、そもそも地方によっては通夜振る舞い自体の習慣がない場合もあります。さらに、親しい方々のみが集まる家族葬では、通夜振る舞いが省略される場合も多いです。
▼開式 本日はご多用の中、お越しいただきありがとうございます。みなさま方においでいただき、○○もさぞ、喜んでいることと思います。ささやかではありますが、お食事をご用意させていただきました。お召し上がりになりながら、○○との思い出話などもお聞かせいただければと存じます。どうぞお時間の許す限り、ごゆっくりおくつろぎください。 ▼閉式 本日は突然のことにもかかわらず○○のためにお集まりいただきありがとうございました。おかげさまで滞りなく、通夜を終えることができました。思い出話はつきませんが、夜も更けてまいりましたので、このあたりでお開きにさせていただきたいと存じます。明日は○時○分より葬儀を執り行います。何卒、よろしくお願いいたします。本日は遅くまでありがとうございました。 |
告別式
お通夜と同様に、告別式が終わったあと、つまり出棺時に喪主が挨拶を行います。一般葬では、告別式が終わって帰宅する方もいるため、このタイミングで感謝を述べるのが適切だからです。
挨拶に盛り込まれる基本的な内容は、参列してくれたことへの感謝や今後の付き合いをお願いする内容などが多いです。しかし、家族葬では参列者全員が火葬場へ向かうことも多く、この場合は喪主の挨拶を省略するケースもあります。
本日はご多用の中ご参列賜りまして誠にありがとうございます。故人も、こうしてみなさまにお集まりいただき、さぞかし喜んでいることと存じます。今後は生前の故人に接したと同様、残された遺族にもご厚情を賜りますよう、ひとえにお願い申し上げる次第でございます。簡単ではございますが、お礼の挨拶にかえさせていただきます。ありがとうございました。 |
精進おとし
精進おとしは、葬儀後に行われる会食です。通夜振る舞いと同じく、会食の前後に喪主から簡単な挨拶を行います。精進おとし開始時は「葬儀が滞りなく終わったこと」「食事の席を用意していること」を述べましょう。
精進おとし終了時の挨拶は、葬儀を締める挨拶となります。しっかりと感謝の気持ちを伝え、四十九日法要の詳細が決まっている場合はその案内も行いましょう。
▼開式 本日はご多用のなか、○○のためにお集まりいただき誠にありがとうございました。おかげさまでつつがなく葬儀を終えることができました。これもひとえに皆様方のお力添えの賜物です。改めてお礼申し上げます。心ばかりではございますが、精進落としの席を用意しましたので、お時間の許す限り、おくつろぎください。また、故人のお話などを聞かせていただけると大変うれしく思います。本日は誠にありがとうございました。 ▼閉式 本日はお集まりいただき、誠にありがとうございました。みなさまより、私どもの知らない○○の姿をうかがうことができました。もっとお聞きしていたいのですが、そろそろ時間がまいりましたので、このあたりでお開きとさせていただきます。なお、四十九日の法要は○月○日を予定しております。あらためまして、本日は誠にありがとうございました。どうぞ足元にお気をつけてお帰りください。 |
火葬で解散する場合
葬儀によっては、火葬後に解散する場合もあります。火葬場では、炉の前で肉体を持つ故人と最後のお別れをし、火葬後に収骨します。収骨後に火葬場で解散する場合は、感謝の気持ちと四十九日法要の案内を伝えましょう。
本日は亡き〇〇のためにお集まりいただき、ありがとうございました。おかげ様で、葬儀を滞りなく終わらせることができました。こちらで解散とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。 |
僧侶に対して
僧侶に読経や戒名授与をしてもらう場合は、僧侶に対して挨拶しましょう。一般的に多いのは、下記3つのケースです。
- 枕経を読んでもらうとき
- 告別式で僧侶を迎えるとき
- 告別式後に僧侶を送るとき
基本的に、足を運んでもらったことや読経や戒名授与への感謝を伝えます。
▼枕経を読んでもらうとき 本日はお忙しいところ御足労いただき、誠にありがとうございます。ご指導のほどよろしくお願いいたします。 ▼僧侶を迎えるとき 本日はご足労いただきありがとうございます。予定通り通夜を執り行いますので、よろしくお願いいたします。 ▼僧侶を送るとき 本日はご多忙のところ、大変ご丁寧なお勤めをたまわりありがとうございました。おかげさまで無事に葬儀を執り行うことができました。 |
家族葬の喪主が子どもの際の例文
一般的に家族葬の喪主は夫や妻が務めますが、子が務める場合も多いです。子が喪主の挨拶をする際のポイントと、例文を一部紹介します。
息子(長男)
長男は両親が亡くなった場合に喪主を務めることが多いため、挨拶をする機会は比較的多いといえます。そのため、一般的な挨拶の例文は、長男がそのまま使用できる場合がほとんどです。初めて喪主を務める方も多いと思うので、例文を確認し、自分なりにアレンジしてみましょう。
▼通夜振る舞い 本日はお忙しい中、父である○○○の通夜にご参列いただき、誠にありがとうございます。父は、今年の〇月より病気で療養中でしたが、昨日午前(午後)〇時に眠るように息をひきとりました。享年〇歳でした。 いつまでも明るく前向きな父でしたが、最期の時まで明るくその場を和ませてくれていました。 ▼告別式 本日はお忙しいところ、父○○○の葬儀にご会葬・ご焼香を賜り(たまわり)、誠にありがとうございます。皆様から心のこもったお別れの挨拶をいただき、故人も喜んでいると存じます。生前中のご厚誼(こうぎ)に、厚く御礼申し上げます。 私どもはまだまだ未熟ではありますが、故人の教えを守って精進していく所存です。今後ともご指導、ご鞭撻(べんたつ)くださいますようお願い申し上げます。 本日は誠にありがとうございました。 ▼精進おとし 本日は誠にありがとうございました。おかげをもちまして故○○○の葬儀、告別式を滞りなく無事に終えることができました。あらためてお礼申し上げます。 皆様お疲れのことと存じます。ささやかですが、皆様への感謝と慰労を兼ねまして、お食事の席を用意させていただきました。わずかばかりの時間ではございますが、故人との思い出などをお話いただきながら、時間の許す限りお過ごしいただきたいと存じます。 本日は誠にありがとうございました。 |
娘(長女)
長女の場合も、挨拶の内容に大きな変化はありません。挨拶の内容に長女らしい故人との思い出が盛り込まれていると、故人との思い出の深さが伝わります。
○○の長女の○○でございます。 本日は、ご参列いただきまして、ありがとうございます。 おかげさまで、つつがなく式を執り行うことができまして、これより出棺の運びとなりました。 母は○月○日の早朝に老衰の為、他界いたしました。享年○歳でございました。 皆様からいただいた生前のご厚誼(こうぎ)に心より感謝いたします。母に代わって、心よりお礼を申し上げます。 みなさまには、これからも変わらないご厚情をお願いいたしまして、ご挨拶とさせていただきます。本日は、誠にありがとうございました。 |
喪主の挨拶で使ってはいけない言葉
喪主の挨拶では、使ってはいけない言葉がいくつかあります。
- 繰り返しの言葉
- 不吉な言葉
- 忌み言葉
繰り返しの言葉は「不幸が繰り返される」として、葬儀の挨拶として不適切とされています。さらに、忌み言葉は宗教的な表現や「不幸を連想させる」として、冠婚葬祭の場で使用されません。
知らずに使ってしまう恐れがあるため、挨拶文を作成する前にしっかりと確認しておきましょう。
使ってはいけない言葉 | 具体例 |
繰り返しの言葉、続き言葉 | たびたび、いろいろ、またまた、みなみなさま、さまざま、かえすがえす、ますます、つぎつぎ、重ね重ね、わざわざ、ときどき、しばしば、だんだん、さまざま、引き続き、繰り返し、重ねて、再び、今一度 |
不吉な言葉 | 4、9、終わる、なくす、消える、悲しむ、落ちる、おしまい、とんでもない、忙しい、焦る、褪せる、衰える、枯れる |
忌み言葉 | ▼仏式 浮かばれない、迷う ▼神式・キリスト教式 供養、冥福、往生、成仏、仏、弔う、合掌 |
また、「死ぬ」「急死」「生きていた頃」などの直接的な表現も使用は避けましょう。
喪主の挨拶をする際のポイント
喪主の挨拶をする際に、上手に行うポイントは下記のとおりです。
- 原稿(カンペ)を見ても問題ない
- 感謝の気持ちをしっかり込める
- 大きな声でゆっくり、はっきりと話す
挨拶の内容を覚えるのが苦手な方は、原稿を読み上げる形式でも問題ありません。なかにはすべてを覚えようとして、本番で言葉が出てこなくなりパニックに陥る方もいます。挨拶をするうえで重要なことは感謝の気持ちをしっかりと伝えることなので、形にこだわらなくても大丈夫です。
また、気持ちをしっかり伝えるためには、ボソボソと話してはいけません。大きな声でゆっくり、はっきりと話しましょう。時間の目安は、1〜3分ほどが適切とされています。
胸が詰まって短くなる場合は問題ありませんが、必要以上に長い挨拶は控えましょう。長くても5分以内がおすすめです。
家族葬の挨拶は気持ちをしっかり込めることが大切
家族葬における喪主の挨拶は、形式よりもしっかりと気持ちを込めることが大切です。家族のみで葬儀を執り行う場合は挨拶を省略することもありますが、基本的に家族葬でも喪主の挨拶はしなければなりません。
しかし、挨拶の苦手な方は、気持ちをどのように表現すればいいかわからないと悩む場合もあります。そこで、本記事で紹介した例文を参考にし、自分なりの故人との思い出を取り入れて挨拶文を作成してみてください。
その際は、繰り返しの言葉や不吉な言葉、忌み言葉を避けるようにしましょう。挨拶文を作成したら、本番前にはっきり話す練習をしておくと安心です。入念に準備して、参列者に感謝の気持ちをしっかりと伝えましょう。
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